栄諧情報システムの槌本と申します。

この「目からうろこの線形代数」の電子出版計画のお話を頂きまして、この度、その最初の形がリリースされました。

最初に主著者である中村先生から伺ったことは、「若い学生が教科書を読まなくなった。理由を聞いてみると、教科書は高い、授業が終わったあとまで小さなアパートに置いておく場所が無い」ということでした。

確かに発行部数の少ない紙の本はどうしても数千円かかります。授業科目も何十もあるのでアルバイトしても大変です。でも、Kindleなどの電子書籍なら紙の本に比べてはるかに価格を抑えることができます。スペースはいりません。学生に聞いてみると、多くの人がパソコンやスマホで文章を読むのは抵抗は無いと言います。それなら、KindleやiBookで教科書を作ればいいじゃ無いかと思いました。業者さんにお願いすると結構高いので、電子書籍(eBook)の作り方を勉強しました。

電子書籍は安く作れ、場所を取らないということの他に、

  • 音声や動画を簡単に入れることができる。
  • カラーを使ってもコストが変わらない。
  • 問題の回答を隠したり、選択肢の順番を変えたりできる

という利点もあります。まだ未発展の分野なので、皆で考えれば、教育の効果を上げる工夫が他にも見つけられると思います。

これが、中村先生が語られた最初のコンセプトでした。


私は若い頃、物理学者を志してニューヨークの研究所にお世話になっていたのですが、大御所の先生方は、英語はもちろんドイツ語は読めて当たり前、ラテン語はちょっと厳しいかな、というハイレベルな研究所でした。「だって、アインシュタインの原論文はドイツ語じゃない」と言われてみれば、確かにその通りですが、私は英訳されたものしか読んだことがありません。いやいや、日本語訳でしか読んだことないよ、という方も沢山いらっしゃると思います。

ドイツ語という私にはハードルの高い著書を、誰かが英訳し、誰かが日本語訳してくれたおかげで読みやすくなっているんですね。教科書は私にだって、ずっと昔から歩み寄ってくれているんです。そうしてみると、はたして、今の大学で使われる物理や数学の教科書は、今の学生に歩み寄っているでしょうか。

私はこのプロジェクトへの参加を決めました。


さて、では、どうすれば「歩み寄れる」のか。いろいろと紆余曲折しました。メディアミックスを取りこんで親しみやすい動画などを合わせてみたらどうか、なども考えましたが、全面動画にするのはとても大変で、諦めました。ただ、図の一部は動画の方が分かりやすいものがあると思いますので、部分的な動画化はやってみたいと思っています。

結局、私はこの動画展開の所であまり良い案が出せず、この出版には思うような貢献はできなかったのですが、この「目からうろこの線形代数」は、これまでの教科書にはない特徴があります。

この教科書でとった「歩み寄り」は、まず物理や数学が専門でないもう1人の著者(第2著者)が分かるまで何度でも教科書を書き直すという、読み手目線を徹底した書き方で書かれました。そして、いつでも読めるように、スマホで持ち歩けるリフロー式電子書籍という形態をとりました。さらに、出版後も、このサポートサイトで読み手からのフィードバックを集めて、もっと皆さんに分かって貰える教科書に仕上げていきます。おそらくはこれまでの「教科書」ではなかった革新的な作り方だと思います。

数式や数学記号の表示に関して、特にスマホのKindleアプリの制約がとてもとても大きくて、中村先生が相当な時間を割いて、色々なスマートフォンでもできるだけ致命的にレイアウトが崩れない方法を探しました。スマホでは読みにくい部分もあると思いますが、ここまで表示させるだけでも本当に大変でした。

そうした困難を乗り越え、この新学期に合わせて、やっと第1版を出版することができました。線形代数は理系全般だけでなく文系の基礎知識としても強力なツールですので、皆さんのスマホで、是非持ち運んで読んでいただければと思います。価格も教科書としては破格の設定になっておりますし、Kindle Prime 会員なら読み放題の対象です。

そして、分かりにくい所があれば、このサイトの「フィードバック」ページから、コメントして下さい。多忙な先生ではありますが、できる範囲で時間を割いて頂き、コメントか教科書改訂という形でお返事させて頂けるように思っております。

投稿者: 槌本 裕二

えっとワークのシステムを作っています。