DNAが遺伝子の本体であるという発見を境に、生物学は大きく発展しました。そこでは、分子生物学が決定的な役割を果たします。この本は、生物学を学んだことのない方を対象に、生命の基本単位である細胞から始めて、生命の設計図であるDNAの構造を学び、細胞はどのように増えていって生物の身体をつくるのか、その過程でどのようにして異なる働きをする細胞ができていくのか、そしてDNAの理解と分子生物学の発展で可能になった遺伝子とゲノムの操作について説明をしていきます。

改訂版では、2020年2月に流行した新型コロナウイルスを正しく理解するための手助けとなるよう、ウイルスによる感染症とPCRについての付録を加筆改訂しました。

生命とは何かというのは人類が考えてきた基本的なテーマです。決して医師や生物学者だけが理解していればいいという問題ではありません。実際、健康や長生きは多くの人に関心があるでしょう。自分が生きているのはどういう仕組みによるのか、知的好奇心を持った全ての方に現代の生物学を理解していただくためにこの本を作りました。途中で話が難しくなると、生物学を全く知らないクマさんが出てきて、混ぜ返します。そんなところでは、読者の皆さんも、そうだよな、ここは分からないよなあと思ったり、このクマ公はバカじゃないかと思ったりして、自由に考えてみて下さい。生物学は、分類を覚える学問から、物理や化学と同じように、物質の変化のプロセスで生命現象を解き明かし、理解していく学問に変わりました。この本が、生命とは何かを自分の頭で考える手助けになることを願っています。

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